2強の一角がついに動いた。デジタル一眼レフカメラでキヤノンと世界市場を二分するニコンは、9月21日、ミラーレスカメラに参入することを発表した。

ニコンが10月20日に世界同時発売する「Nikon1」は、一眼レフからミラー部分を取り除いたミラーレス構造を採用。レンズ交換式のデジカメで世界最小を実現、専用の交換レンズだけでなく、アダプターを装着すれば既存のニコン製レンズも使える。販売価格は標準レンズとのセットで約7万円からの想定だ。

ミラーレスは小さくて軽く、持ち運びに便利なことから、女性層を中心に支持を集める。調査会社BCNによると、国内の一眼レフ販売に占めるミラーレスの比率は、昨年9月の25.8%から今年8月に41.4%へ拡大中だ。2008年にパナソニックが先鞭をつけ、続いてオリンパスとソニーが参入。ペンタックスも新製品を投入した。

業界中が群がる背景には、コンパクトデジカメの深刻な値崩れがある。アジア需要増で販売が伸びる一眼レフを尻目に、コンパクトはカメラ付き携帯電話との顧客争奪戦が激化。年約15%の販価下落を強いられている。各社ともに、コンパクトより高単価で交換レンズなど付加価値需要も見込めるミラーレスへと、顧客の乗り換えを促進、カメラ事業の収益向上を狙う。

ニコンも好採算の一眼レフで稼ぐ一方、コンパクトは価格競争に巻き込まれ、黒字を確保するのがやっとだ。「3本目の柱として育成することで成長戦略を加速させたい」と、ニコンの岩岡徹マーケティング本部長は意気込む。

実は同業他社では、コンパクトを展開する富士フイルムホールディングスも、来春発売に向けミラーレスの開発を進める。「投入を検討中であることは事実」(富士フイルム)。となれば、国内メーカーで参入表明していないのは、2社だけ。うち1社はアイデア重視の独自路線を標榜するカシオ計算機。ただカメラ事業は赤字続きで、開発費をつぎ込めない台所事情から、参入の公算は低い。

■“洞ヶ峠”のキヤノン

注目は何と言っても、残りの1社。一眼レフ王者であるキヤノンの動向だ。

キヤノンは「デジタル一眼カメラの小型・軽量化のためミラーレスを含めた構造を研究中」とする。実際に「小型一眼」のプロジェクトチームで新製品開発が水面下で進行、関係者間では「来春にもミラーレスを投入するのではないか」とみられていた。

だがここに来て「キヤノンはミラーレスを出さないのではないか」(関係筋)との見方も急浮上。「ミラーを備えた小型軽量タイプの一眼レフ」という、ライバルより一歩先の製品開発を優先する可能性はあるようだ。

ミラーレスはファインダーをのぞいて撮影できない構造から、シャッタースピードが遅れる欠点があり、動く被写体などの本格撮影には不向きとされる。キヤノンがミラー搭載の小型一眼を発売するとなれば、小型軽量でかつ高い撮影能力も備えた、画期的な製品になるかもしれない。

そもそも、ミラーレスが売れている市場は、日本と韓国など一部地域に限定される。主要市場の欧米では認知度が低い。「世界では年間230万の販売台数でしかない(デジカメ販売合計の2%未満)。今後グローバルに拡大していくかは疑わしい」とテクノ・システム・リサーチの大森鉄男氏は分析する。

キヤノンは今まで、新しい製品が台頭してもそれが市場に浸透するかじっくりと見極めてから、ようやく自社製品を投入する方針を貫いている。ひとたび製品化すれば、あとは一気呵成の展開で市場を支配した。今回も「小型一眼」プロジェクトをどのような形で具現化するかは、世界的な需要動向を分析しながら慎重に判断するもようだ。

参入決定のニコンに対し、より有利な方向を見定めようと、“洞ヶ峠”を決め込むキヤノン。両社の対照的な姿勢が吉凶どちらに転ぶか。それはカメラ市場全体の将来をも大きく左右する。

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