来年度から中学校で使われる理科の教科書に、30年ぶりに「放射線」についての記述が盛り込まれることになり、担当教員が指導に頭を悩ませている。東京電力福島第1原発の事故では、放射性物質の汚染への対応を巡って差が生じたり、原発との向き合い方も意見が分かれている状況。放射線について教えた経験がない教員も多く、「生徒からの質問に的確に答えられないのでは」と不安も広がっている。

中学の教科書には、80年度まで放射線に関する記述があった。その後、指導内容の厳選で記述が消え、08年に改定された学習指導要領で復活が決定。エネルギー資源についての学習の中で原子力にも触れ「放射線の性質と利用にも触れること」と明記された。来春から使われる中学3年の教科書には、放射線が医療や物体内部の検査に活用されていることや原発の仕組みなどが盛り込まれることになった。

だが、その後に起きた原発事故で、放射性物質の汚染に対する対応を巡って論争も活発に。自治体が空気中の放射線量を日々発表したり、独自に測定している保護者もいるほど身近な問題となり、何をどこまで取り上げるか学校現場の戸惑いは大きい。

教科書への復活を受けて、教員向けの研修会も開かれている。東京都は16日、「放射線の学習指導について」と題する研修会を開催。約50人が参加し、専門家の講演のほか、授業を想定して、放射線を可視化したり塩などの放射線量を測る実験をした。調布市立中の三木敏裕教諭(36)は「放射線について生徒から質問があるかもしれないが、学者レベルでも分からないことも多く、そこに踏み込むと教師側が苦しくなる」と悩む。講師を務めた公益財団法人「原子力安全研究協会」の山本尚幸副所長も「千葉や茨城県の教師からは、プールやグラウンドの放射線量について生徒や保護者から質問されて答えに困っていると聞いた。不安を持っている教師は多い」と話した。

事故を受け、文部科学省は放射線の基礎知識を教えるため副読本を全国の小中高校に配布することを決めた。教え方は現場に任せるという。

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