「一定のめど」での退陣表明から2カ月以上も抵抗を続けた菅直人首相がようやく退陣を明言したのは、民主党執行部が自民、公明両党と連携して退陣の環境を整える前代未聞の包囲網に、ようやく「潮時」を悟らされたためだ。原子力行政の見直しなど政権の「成果」を強調するが、退陣時期をなお明確にしないところに未練もにじませる。

「十分国民の皆さんに理解をいただけていないという意味では残念なところはあるが、やるべきことはやっているという意味で残念とか悔しいという思いは決してない」

首相は10日の衆院決算行政監視委員会で未練を否定する一方、東日本大震災の復旧・復興、原発事故の収束、税と社会保障一体改革を成果として列挙した。

9日には自身のブログで「脱・原発依存」方針について「言葉を繰り返しているだけではない」と強調。経済産業省の幹部更迭と原子力安全・保安院の分離を決めたことにより「中味(人事)と器(組織)の入れ替えで、もう後戻りはさせない」と訴えた。ブログへの書き込みは6月2日の退陣表明以降19回に及び、政権の幕引きを意識した実績アピールの場となっている。

民主党の岡田克也幹事長ら執行部が首相退陣へ動いたのは、野党との協力関係を構築することで次期政権で主導権を握るためだ。首相がお盆前に退陣時期を表明して代表選に突入する日程を岡田氏は描いていたが、首相はこれにはなお抵抗している。

本来、自らの路線を引き継ぐはずの現執行部の代表選戦略に、全面協力できない首相の複雑な心境。潮時とは分かっていても、退陣そのものに納得できない悔しさが、成果を強調する言葉の端々に表れている。【平田崇浩】

◇「菅直人首相が進退に関して行った主な発言◇

6月2日(民主党代議士会) 震災の取り組みに一定のめどが付いた段階で、若い世代にいろいろな責任を引き継いでいただきたい

6月27日(記者会見) この三つ(11年度第2次補正予算案、再生可能エネルギー固定価格買い取り法案、特例公債法案の成立)をもって一定のめどと考える

7月6日(衆院予算委) 「辞める」「退陣」という言葉を私自身に対して使ったことはない

8月9日(官邸で記者団に) これまで自分で言ったことについては責任をもちます

8月10日(衆院財務金融委) (3条件が)成立したら、代表選を速やかに行い、新代表が選ばれた時は首相の職務を辞して新たな首相を選ぶ段階に入る

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